ウォルト・オデッツの著書を読んで最初に 感じるのは、彼が並外れたセラピストである に違いないということだろう。2019年に出版 された『Out of the Shadows: Reimagining Gay Menʼs Lives(原題)』(影の外へ:ゲイ男性 の生き方を再構築する)は、エイズの蔓延とそ の長い余波を通じて、35年以上にわたりゲイ 男性にセラピーを行ってきたオデッツの洞察 と回想を集約したもの。本書を「白鳥の歌」 (訳注:最後の作品の意)だと表現する彼は、 繊細で、探求的で、人道的な方法で精神を追求 する。そして、あるときは曖昧さを受け入れ、 あるときは率直に意見を述べている。ゲイ男 性に特化した心理学資料が驚くほど希少なた め、本書の重要性はより一層高まっている。発 売時、『ニューヨークタイムズ紙』は「切実で 痛々しいほど美しい」と評した。 オデッツは、執筆やセラピーの傍ら、長年に わたり HIV の啓蒙活動に取り組んできた。 1995年には、ウイルスに感染していないゲイ 男性が抱える心理的トラウマ(悲しみや不安、 生存者の罪悪感)について、反響を呼んだ著書 を出版している。きれいに梳かれた白髪に黒 縁の眼鏡という風貌の…… 続きは紙面でお楽しみください。 TwitterFacebookPinterest こちらの記事は Kinfolk Volume 40 に掲載されています 購入する Related Stories Arts & Culture Volume 30 花をいける: 安本美代子 フローラルデザインの世界でひときわ存在感を放つ安本美代子さんのパリのアトリエにて。 Arts & Culture Music 私のお気に入り 指揮者、ロデリック・コックスは、指揮棒を自分の身体の延長と考える。 Arts & Culture Volume 35 エッセイ: ライフコーチ セラピストでも、友人でもない、「ライフコーチ」という存在。 その増加の理由はなんだろう? Arts & Culture Music Volume 45 Googoosh / グーグーシュ ペルシャポップの女王との貴重な謁見。 Arts & Culture Volume 36 デイビッド・ エリツォ 幻覚剤の潜在的な可能性について。 Arts & Culture Volume 49 ロサンゼルスは彼方 ニューヨーカーがロサンゼルスについて考える。