ミシュラーは、まったく違う方向に進むこともできた。たとえば、インフ ルエンサーカルチャーで一般的な、ブランドの動画広告や Instagram でプロテインパウダーのPRをすることも可能だった。しかし彼女の動画コン テンツとSNSには、明らかにローファイな要素が残っている。世界で大人 気のヨガインストラクターとしてではなく、親友として話しかけてくれて いるような感覚があるのだ。さらに、彼女が商品を熱心に宣伝しようとし ている感じはしない。もちろん、動画では提携ブランドのひとつである Adidasのウェアを着ているが、彼女の同ブランドのInstagram広告は自然 体だ。
インフルエンサーになることを敬遠してきたミシュラーだが、いまは他 のビジネスの道にも力を入れ始めているという。「以前はビジネスには極 力触れないようにしていました。そこだけに注目されたりするのが嫌で。 でもいまは、隠すのは不自然だと思うようになりました」。ミシュラーと シャープは、長年、「誰かに何かを売り込むということをしたくなかったの です」と話す。「私たちはクリエイティブな人間なので、自分たちですべて を所有し、すべてをコントロールできる場所を創造したかったのです」
「以前はビジネスには 極力触れないようにしていました。 そこだけに注目されたりするのが嫌で。 でもいまは、隠すのは不自然だと 思うようになりました」
ミシュラーとシャープが運営するアプリ「Find What Feels Good」は 2015年から始動していたが、パンデミックをきっかけに彼女は「このアプ リを堂々と宣伝してもいい」と思うようになった。新しいフィットネス系の アプリが日々誕生し、有名インストラクターたちが オンラインレッスンに移行している姿を目の当た りにしたからだ。「いまこそ、自分たちがやっている ことをみんなに知ってもらうべきだと思ったんで す」。カービーヨガ、キッズヨガ、瞑想などの多種多 様のヨガコンテンツだけでなく、グリーンスムー ジーの作り方なども紹介する同アプリは、現在成長 中だ。「私の夢は、『Find What Feels Good』のプラッ トフォームが、あらゆる種類のインストラクターが 集い共有できる、ヨガ版の『セサミストリート』のようになること。多様性 と愛情にあふれ、クリエイティブなすばらしいリーダーたちとフォロワー がコミュニティを牽引していくのです」
それでも、ありのままの自分の存在、そして自分が選んだ道が持続可能 なものなのかを見極めるために、最終的に彼女は自己に目を向ける。また 最近では、母親の故郷のメキシコシティで過ごすことが多くなり、動画コ ンテンツの本数も減らしている。3 「今年の初め、パートナーに『何をしてい るのが楽しい?』と聞かれて、『え?』となりました。彼は、私が楽しいこと をしているときでさえも、達成感を追求するようなモードに陥っているこ とを指摘したかったのだと思います」。ミシュラーは、ヨガが中心ではない 人生を送ることを静観してみる。しかしヨガを超えた人生について思考を 巡らせてみても、最終的にはやはり仕事のことを考えてしまうそうだ。 「もっと遊びの要素を取り入れてみると、それが心の栄養になって仕事に 現れるのかもしれませんね。さて、今後どうなるか見ていてくださいね!」