その本を読んだことで、デイビッドは家業に加わり、祖父が掲げた統 一と世界平和のビジョンを実現するために働く決意を固めた。「現在 は、どうしたら世界を統一でき、持続可能な環境で暮らせるかについ て、より現実的なアプローチを取っている状態だと言えるでしょう」
1998年、デイビッドが会社に加わって間もなく、両親はサンディ エゴにある約400ヘクタールの土地(「私たちの全資産の3分の1の 値段でした」)を子どもを支援する非営利団体に寄贈した。「この出 来事が、私と、弟で社長を務めるマイクにとって、どんな会社を作る べきかという指針となったのです」。それ以来、ドクターブロナー社 は動物の権利保護やフェアトレード調達から再生有機農業、薬物政 策改革に至るまで、さまざまな社会活動支援のために数百万ドルを 寄付してきた。「過去20年間で約1億ドルを寄付してきました」
ブロナー家は、社内においても所得格差の拡大という問題に対処 しようと試みている。従業員に生活賃金を支払い、5対1の給与上限 制度を導入した。これはデイビッドのような経営幹部の報酬が、もっ とも低い賃金を得ている従業員の5倍を超えてはならないという制 限を意味する。
同社が取り組む数多くの社会貢献活動のなかでも、デイビッドが とくに力を入れているのがサイケデリック薬物だ。ドクターブロ ナー社は国内有数のサイケデリック研究支援団体となり、PTSDや 依存症、不安障害、うつ病など多様な疾患治療への応用を推進すると ともに、その非犯罪化を提唱している。デイビッド自身も約3カ月ご とに、ペルー原産の幻覚作用のある精神活性物質メスカリンが含ま れたサボテン「ワチュマ」を摂取している。「家の裏庭にたくさん植え ているんです」
サイケデリックで肯定的なメッセージは、アイコニックなラベル にもちりばめられている。たとえば、「魂を癒やすためのサイケデ リック支援療法を支持しよう!」といったように。同社特有の細かい 文字で埋め尽くされた商品ラベルは、長年にわたり、他社から遠慮の ないかたちで模倣されてきた。しかしデイビッドによれば、祖父は 「一般的なマーケティングの常識をことごとく無視して」あのラベル を生み出したのだという。「文字とグラフィックを組み合わせた、あ あした表現方法を真似する会社はありますが、そこには私たちのよ うな魂や情熱、真正さが感じられません。他社にとってはマーケティ ングの一環なのでしょうが、祖父にとってそれは、いちばん関心のな いことだったのです」
確かに、あのラベルは、何千もの単語と訴えかけ、感嘆符(「水で薄めて!薄めて! OK !」)が並ぶ、紛れもな い特徴的なデザインだった。しかしそれは、ブ ランディング戦略というより、むしろ偶然の 産物だったという。「実は祖父は70年代初頭 に失明しているんです」とデイビッドは語る。 「目が見えない人がデザインしているので、本 人が文字の小ささをどれほど認識していたか どうかさえ疑わしいのです! でも祖父が自 身のメッセージを貫き通したことは確かで す」
「目が見えない人が デザインしているので、 本人が文字の小ささを どれほど認識していたか どうかさえ疑わしいのです」