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  • Arts & Culture
  • Volume 30

RON FINLEY
ロン・フィンリー

ライターのステファニー・ダルク・テイラーが会いに行ったのは、ガーデニングを通して活動家として活躍しているロン・フィンリー。ロサンゼルスのサウス・セントラル地区の不毛の公共スペースに種を蒔き始めたことで、彼は地域活動家としての新たな天職を得た。市民菜園が増えるたびに、彼のモチベーションは高まるばかりだ。新刊『The Kinfolk Garden』からの抜粋記事。 Words by Stephanie d’Arc Taylor.. Photography by Justin Chung.

ガーデンニング愛好者の多くは、その作業に癒やしや健康増進という効果 を見出している。ロン・フィンリーのように社会改革の手段としてガーデニ ングを選ぶのは稀である。フィンリーはロサンゼルスの危険地域として悪名 高いサウス・セントラル地区で育ち、ファッションデザイナーやパーソナルトレーナーとして大成した。1 そして菜園を作るという行為に彼の政治意識 は結晶化した。

再生回数が 250 万回を突破している 2012 年の TED トークで、フィンリー は政治に目覚めた経緯を、過激な言葉を織り交ぜながら軽快な口調で語って いる。サウス・セントラル地区は、彼いわく、いわゆる“食の砂漠”と呼ばれる 場所である。つまり、ファストフード店やコンビニは多数あるが、生鮮食品店 へのアクセスが悪い都市部の地域だ。新鮮な果物や野菜を手に入れることが できず、その結果、肥満や高血圧などの生活習慣病が急増している。そのことに落胆したフィンリーは、道路脇のスペースを野菜やバナナの木を育てる菜 園として生まれ変わらせた。2

すると、ロサンゼルス市はフィンリーが無許可で公有地を使用したという 理由で逮捕状を発行した。しかし世論が反発したことで、道路脇でのガーデ ニングを禁止していたロサンゼルスの法律が改正。これにより、フィンリーは“市民菜園の活動家”という先駆的な新しいキャリアを歩み始めた。 「ガーデニングは、もっとも癒しの効果が得られる政府に対する挑戦的な行 為です。特に都市部では」と電話越しにフィンリーは語る。彼は今、新設したばかりのロサンゼルスの活動拠点にいる。「私が作った菜園が教育のツールになり、さらに地域そのものを変えていく様子を目の当たりにしてきました」 フィンリーは、市民菜園は社会的弱者が集住する地域に新鮮な野菜や果物 を提供するだけでなく、それ以上の変化を及ぼす影響力があると主張する。 それは、地域住民が食料自給率を上げることで、低所得者層のコミュニティ に蔓延する、社会的および政治的な“自滅的なサイクル”からの脱却が可能となるからだ。だが、その好ましい変化が地域経済に与える影響についても指 摘する。

「自分が食べるものを育てる人が 1%でも増え、健康的な食生活を送ると、ど うなるかわかりますか? 医療や食料品店に落とすお金が、その分だけ減る のです。だから菜園による自給自足は、私たち市民にとっては良いことです が、体制側にとって危険なことなのです」。フィンリーが初心者に一番にする アドバイスは、彼の歯に衣着せぬ性格をよく表している。「何を育てたらいい のかわからない人は、自分が食べたいものを植えること。好きなものだけ植 えろ、嫌いなものなんて植えるな、ということです」 しかし、食料を育てることだけが彼の菜園の目的ではない。「私は収穫のた めだけに菜園を作っているのではありません。菜園は景観美、交流の場としての役割もあります。基本的にはバカでかい社会実験なんです。都市社会学 者として私は『かつて都市環境に存在しなかった菜園と、人々はどうやって 関わっていけるのか』という問いを投げかけています」 フィンリーの市民菜園では、「ロシアンマンモス」というヒマワリの種が特 に近所で話題になっている。このヒマワリは 3 メートルの高さまで育ち、直径 30 センチ以上の花を咲かせる。「子どもたちは立ち止まって、『マジ? これ 本物の花?』と聞いてきます。ここの住民はこんな花を見たことがないので 驚くのです。私が求めているのはまさにこういった関わり合いです」