我が家を訪れた親戚から受け取った菓子折り。クリスマスの朝、ツリーのたもとに置かれた大きくて華美な箱。祖父母から送られてきた、小包。上面には「季節のおすそわけ」なんて書かれている。もし、それらと対峙したとき、わたしは刹那に芽生えた衝動を押し殺すことはできそうにない。とにかく中身が見たい。もちろん、そうだ。けれど何よりすぐさましたいのは、それらを手際よく開けるという行為。その時の興奮といったら、きっと誰にでも覚えがあるはず。 UNPACK THE COMPACT – これはISSEY MIYAKEが2021年春夏コレクションに掲げるテーマだ。「服をコンパクトに収めて世界中の人々の元へ届けるとともに、それを開けるときの驚きと歓びを感じてもらいたい」 。デザイナーの近藤悟史は、前回のコレクション時に海外へ送る大量の荷物を目の当たりにし、同コレクションでは絶対的な物量を減らし、ひとつの箱にすべてのルックを収めるイメージで、コンパクトな服づくりに取り組んだ。そんな今回のコレクションで特筆すべきは、“かたちの変化”。それは衣服の機能性や利便性を重視したものではなく、手のひらで畳む、重ねる、束ねる、丸めるなど素材やデザインの特徴を活かした独創的なかたちの変化が、見る者、そして着る者に大きな驚きと喜びをもたらしてくれるのだ。 そうした独創的なかたちに変化する衣服たちをKinfolk が撮影したのは、東京のとある倉庫。衣服のパーツやプリント、そして伸縮自在のマネキンたちがまとう完成された衣服。壁面や床に点在するそれらは、まるでおもちゃ箱から飛び出してきたかのようにカラフルで、驚くほど楽しげに見えた。 “届いた箱を開けるとき。包まれたものを解くとき。 小さく折り畳まれたものを広げるとき。束ねたものをばらすとき。くるくる丸めるとき。つぎつぎ重ねるとき。バラバラになったものを、組み立てるとき。たったそれだけの瞬間が、何だか嬉しい。ものの形が変わるとき、それを見る目も変わる。そこに生まれる力が、自分の心を少しだけ新しくしてくれる ” そのとても興味深い空間にはISSEY MIYAKEの心からの思いが、たしかにあった。 TwitterFacebookPinterest こちらの記事は Kinfolk Volume 31 に掲載されています 購入する Related Stories Fashion Volume 41 水のなかの私たち 仲良しのふたりが 大海の一滴となる。 Fashion Films Volume 40 ファリダ・ケルファ フランスのファッションミューズに訊く。 Fashion マルケイサック庭園 まるで迷路のようなマルケイサック庭園では、迷子になるのが吉。 Design Partnerships 再び集う フリッツ・ハンセンとのパートナーシップによる、小さな集いの再来。 Fashion Volume 32 気まずさ その場をなんとか繕うとするけれど。 Design Fashion Volume 40 A.P.C.の創設者ジャン・トゥイトゥ A.P.C.の創始者が語る、誇大宣伝と匠の技の需要