明日、あなたからダンスが奪われるとしたらど う思いますか?
打ちのめされるでしょうが、どうにか耐 えられるでしょう。私は身体とその可能 性に限りなく魅了されています。私たち はこの身体のなかで生きていて、何かを したり、感じたり、反応したり、しなかっ たりします。心と身体との関係は素晴ら しい。私はダンスから身体に注意を向け ることを教わりました。ステージ 上で振付をしなくても、私は動き を解釈し、体を通して世界を感じ ているのです。照明や舞台、そし て正式なトレーニングがすべて なくなったとしても、身体がなく なることはありません。
自分の身体の声に耳を傾けなかった ことはありますか?
私は身体の声に反応したことな んてありません! ダンサーは いつでも自分の身体の声に耳を 傾け、その反応を無視するように 鍛えられています。たとえ身体が 「痛い!」や「疲れた!」と叫んで も、続けなければならない。メイ ンストリーム(健常者)のダン サーがこのように自分の身体と 格 闘 するのを 見 てきました。 Kinetic Light では、信じられな いほど美しい作品を「身体にとっ てサスティナブルな方法」で作る ことができればと思っています。
ダンサーとして自分を追い込みつつ、セルフ ケアもできる環境を作るにはどうしたらいい でしょうか?
それはプロのダンサー、特に障害を持っ たダンサーにとっては大きな問題だと思 います。自分の身体を限界まで追い込む 必要はないのです。ダンスとはそういう ものではありません。そのような考え方 はやめて、ダンスは身体の表現であると 考えましょう。ダンスとは自分の身体を コントロールすることでもありません。 Kinetic Lightのダンスは肉体的にきつい ですが、リハーサルの前に自分の身体と 向き合うようにしています。大切なのは 身体を作ることです。筋力という意味で はなく、自分の身体を探求し、知ること で、それを鍛えることができるのです。自 分の身体の状態を知り、どのように動く のがベストなのか理解すること。そして 自分のしたいことをするために、身体を 強化しセルフケアするためのサポートを すること。ある人にとって、サポートとセ ルフケアは何時間もジムに通うことかも しれません。他の人にとっては、複数のダ ンス教室に通ってメインストリーム(健常者用)の教育を受けることかもしれま せん。また、そのどれにも当てはまらない 人もいます。
Kinetic Lightのメンバーは全員、障害を持っ たアーティストです。共同作業で身体を操り ながら、障害、人種、クィアネスというテーマ を探求するなかで、どのようにしてチームの 全員の意見を聞いているのでしょうか?
私たちは小さなチームですが、メンバー はみんなこの芸術に対して強い意見を 持っています。私たちが使う比喩のひと つに「野生の馬の群れのようなもの」とい う表現があります。私は馬たちをひとつ の方向に誘導する方法を学んでいるとこ ろです。ローレル・ローソン(ダンサー/ テクノロジーリード/振付家)、ジェロ ン・ハーマン(ダンサー/振付家)、マイケ ル・マーグ(空間演出家)は素晴らしい アーティストです。ですから、ここで問題 になるのは、何が作品に役立つのか? それをどのように表現するのがベストな のか? 健常者は、障害者が作る作品と いえば医学的な話や個人的な苦難の話ば かりだと思いがちです。しかしそうでは ありません。何をテーマにするかは自由 です。自分の障害や人種、クィアであるこ とのトラウマなど、誰かが期待するス テージに立つ必要はないのです。
舞台に向けて行うセルフケアは?
普段の生活とあまり変わりません。舞台 があるからといって、いきなり食事を変 えるわけでもありません。練習して、食べ て、仕事して、寝るといういつもの習慣を 続けるだけです。
舞台の後は息抜きが必要ですか?
舞台のテンションから抜け出すまで時間 がかかります。ツアーが終わると大変な 状態になっていますよ。
どんな感じになるのですか?
私はセルフケアすることを学びました。 舞台が終わって、明日も舞台に立てるよ うに自分の体をケアするのです。夜中の 1 時まで外でパーティなんてしませ ん。家に帰ってケアをしなければな りませんから。身体を氷で冷やし て、ストレッチして、温めて、ちゃ んと食事も摂ります。本番前はあま り食べられませんから。幕が閉じた からといって、舞台上でのエネル ギーがすぐに落ち着くわけではあ りません。
アドレナリンを和らげる工夫はして いますか?
一晩中アドレナリンが出ていると 眠れませんから。身体にアドレナリ ンを処理させて、舞台上での精神状 態から自分のペースで抜け出すよ うにします。そしてそれに伴って生 じる感情をうまく利用するのです。 舞台の後に砂糖やアルコールを大 量に摂取してはダメ。どのように身 体を休めるべきか、誰と一緒にいる べきかを学ぶのです。
プロのダンサーにずっと聞いてみたかったこ とがあります。あなたの友人は、あなたと一緒 に踊りに行くのをためらっていませんか?
そうかもしれません(笑)。でもそれは私 が障害者ダンサーになる前からです。私 は踊りに行くのが大好きでした。何時間 も踊り続け、時間とともにどんどんワイ ルドになっていきました。より速く、より 高く、よりセクシーに、より汗をかくよう に動くことがすべてでした。自分が誰な のかわからなくなり、誰にでも、何にでも なれるような気がしたものです。いまで は、遊びで踊るのは、パーティや友人と一 緒にいるときや、街角でそういう瞬間が 訪れたりするときだけ。クラブは無理で すね。たとえクラブに行ったとしても、フ ロアが狭いので思い切り楽しむことがで きません。ぶつかったり、お酒を顔にこぼ されたりするでしょう。
遊びで踊るときは、何を踊りますか?
これはシャワーでの鼻歌のようなもので すよね? 80年代のものなら何でも (笑)。プロの歌手はシャワーで何を歌っているのでしょうね?