マイーシャ・バトルは、ルイジアナ州シュリーブポートで通ってい た学校の性教育の教科書が黒いマーカーで検閲されていたことを覚 えている。その経験から本当の答えを求め続け、臨床セクソロジスト や性・恋愛コーチとしての道を歩むことになった。現在はKCRWの ポッドキャスト「How’s Your Sex Life?」のホストを務めるほか、『This Is Supposed to Be Fun: How to Find Joy in Hooking Up, Settling Down, and Everything in Between(原題)』(恋愛は楽しいはず:カ ジュアルな関係から安定した恋愛、そしてその間にあるすべてで喜 びを見つける方法)の著者でもある。バトルにとって、素晴らしい セックスの鍵は恥を手放すこと。その価値観とフェミニズムの視点 が活動の軸となっている。 性と恋愛のコーチとして、どのように仕事に取り組んでいますか? 私のセッションとセラピストのセッションを覗いたら、きっと見 た目はほとんど同じに思えるでしょう。ただ部屋で人が話してい るだけですから。でもセラピーが過去のパターンやトラウマを振 り返ることに焦点を当てているのに対し、コーチングは未来を見 据え、クライアントが目指したい場所に向かうサポートをするの が大きな違いです。たとえば個人の場合、いつかは落ち着けるパー トナーを見つけたいけれど探している間に素晴らしいセックスも 楽しみたいと思っている人もいます。コーチングは行動に重きを 置いたアプローチなので、私はクライアントにセッションとセッ ションの間に実際に行動を起こしてもらい、その結果を振り返っ てもらいます。何がうまくいったのか、どの方法が効果的ではな かったのかを共有してもらうのです。通常は3~6カ月ほど一緒に 取り組むことが多いですが、数年にわたってサポートを続けてい るクライアントもいます。その多くはパートナーとの関係を見直 しているカップルです。たとえばジェンダーのアイデンティティ や性的指向の変化に向き合っている場合もあれば、お互いが他者 と恋愛するオープンな関係を築こうとしている場合もあります。 そうした過程で、道のりをサポートする役割を果たしています。 セクソロジストになろうと思ったきっかけは何ですか? 私は南部で育ち、できる限り最高の教育を受けさせてもらいまし た。ただしそれは性教育の授業には当てはまりませんでした。12歳 の頃からピアカウンセラーをしていたのですが、友人たちから性 や恋愛についてたくさんの質問を受けました。当時の私は答えることができませんでしたが、何か大切な情報が欠けていて、みんな それを求めているのだと気づいたのです。この考えはその後の人 生で何度も確信に変わりました。サンフランシスコ州立大学で健 康教育を学んでいたとき、私は性の健康に焦点を当てました。その ことを人に話すと、みんなが次から次へと質問をしてきたのです。 この仕事のどこに魅力を感じていますか? 変わった仕事ではありますが、自分と深く結びついていると感じ ています。ほかにもできることはあると思いますが、これほど満足 感を得られるものはないのでこの道を選びました。セクシャル ウェルネスのプロフェッショナルは、ビジネスオーナーとして簡 単な立場ではありません。私たちが伝えたいことを発信すると シャドウバンや検閲に直面することが多く、それが非常にネガ ティブなセックス文化を反映していると感じています。決して楽 ではありませんが、これは私の天職であり、この仕事を毎日できる ことに本当に感謝しています。 より良いセックスをするためのアドバイスをお願いします。 セックスについてもっと話すことです。それが一番大切です。生産 的なセクシャルコミュニケーションで大切なのは、欲望について 話すことです。それが相手と一致しないときも受け入れ、お互いに 話し合えることも大切です。たとえば、「それに興味があるのはわ かるけれど、いまはそういう気分じゃないんだ。もしくは、そうい うのは私は好きじゃない、とか。けれど、あなたを愛しているし大 切に思っているよ」という感じです。 セックスは生活の一部であるにもかかわらず、なぜこんなにも恥じら いがあるのでしょうか? 私たちはセックスを、ふたりの人々の間での結びつきであり、子孫 を残すためのものだと無理に定義しようとしてきました。その結 果、それに当てはまらない人たちは「普通」と比較して自分を見つ めることになります。セックスをとても神聖なものとして扱いな がらも、同時にそれを低俗で原始的なものだと貶め、欲望に屈して はいけないという矛盾した考え方が存在しています。それをする 自分は最低だと。でも、その矛盾を作り出してきたのは自分たち だということを忘れがちです。だから私たち自身でその矛盾を 解消することができるのです。 TwitterFacebookPinterest こちらの記事は Kinfolk Volume 48 に掲載されています 購入する Related Stories Arts & Culture Volume 42 カリン・ママ・アンダーソン スウェーデンきっての画家の物悲しくミステリアスな世界に潜入。 Arts & Culture Volume 47 エッセイ 一世一代のウエディングパーティ ミレニアル世代は結婚式の価値を下げているのか? Arts & Culture Volume 36 セルアウト 迷路のように入り組んだ芸術とお金のモラルについて。 Arts & Culture Fashion Volume 31 NEEDLE WORK 古代から伝わる刺青の芸術性が浮き彫りにされている、現代のソウル。 Arts & Culture Volume 46 墓石のレシピ 忘れられないレシピについて。 Arts & Culture Volume 40 健康そのもの 写真家、シャオペン・ユアンが撮影した世界の奇妙な健康法。