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THE CHURCH OWES A DEBT
教会には償いの責任がある

神学者エケミニ・ウワンは、 愛する教会が人種的暴力に加担してきた責任を 追及している。
Words by Kyla Marshell. Photos by Molly Mandell & James Burke.

  • Arts & Culture
  • Volume 48

神学者エケミニ・ウワンは、 愛する教会が人種的暴力に加担してきた責任を 追及している。
Words by Kyla Marshell. Photos by Molly Mandell & James Burke.

エケミニ・ウワンの活動の核となっているのは聖書の「隣 人を愛せよ」という教え。ナイジェリア系アメリカ人 の作家であり、ポッドキャストの司会者、公的神学者で もあるウワンは、キリスト教信仰の根本的な真理を大 切にしつつ、教会という制度を批判的に見つめている。それはアメリ カでの大西洋奴隷貿易やアフリカ全土での植民地支配(ウワンはこ のふたつを「双子の悪」と呼んでいる)を正当化するために、宗教的 教義が利用されてきた歴史を踏まえたものだ。これらの不正の影響 を正そうと、ウワンは賠償を求める活動の第一人者として活躍して おり、国連の「アフリカ系の人々に関する常設フォーラム」の活動を 支える国際市民社会作業部会の創設メンバーでもある。ウワンに とって、賠償とは単に金銭的な補償にとどまらず、宗教的機関が引き 起こした広範な被害を認めることも含まれている。「確かに経済的、 社会的な側面はあります」と言う。「でも何よりもまずこれは神学的 な問題です。なぜなら、行われたことは信仰に対する深刻な冒涜だか らです」

植民地主義がもたらした犠牲について考えたとき、何が思い浮かびますか?

もし私の仲間たちが連れ去られることがなかったら、アフリカは どうなっていたでしょう? もしも資源が奪われなかったら?  ベルリン会議で、あの偽りの境界線によってアフリカが切り分けら れることがなかったら、アフリカはどんな姿をしていたのでしょ う? どうすれば私たちは「預言的な想像力」を働かせて過去に立 ち戻り、改めて考えることができるでしょう? そして、そこから 未来をどう見据えればいいのでしょう? 私は、単に連れ去られた 人々だけでなく、奴隷貿易によって愛する人を失い悲しむことを 余儀なくされた人々、さらに植民地主義の結果として自らの土地 で二級市民として扱われることになった人々が受けた傷を忘れる ことができません。私たちが本来持つべき資源や財産がなく、豊か で活気ある生活を送ることができないという現実もその傷の一部 です。これはアフリカ人やアフリカ系の人々に宿る「神のかたち」 が侵されている重大な不正であり、大きな冒涜だと感じています。

キリスト教が植民地主義とどう関わってきたかについて、どのよう に認識を深めたのですか?

約120万人のイボ族とイビビオ族の人々(ウワンの家族が属する 民族グループ)が西アフリカから連れ去られた歴史があります。大 西洋奴隷貿易と長年の奴隷制度を経た後、イギリスに植民地化さ れました。そのため私はその影響がナイジェリア人の生活にどの ように反映されているのか、そしてそれが私たちの家族にどのよ うに現れているのかをよく理解していました。私は1970年代初め にアメリカに移住してきたナイジェリア移民の子です。つまりこ こに来た移民の第一波。でも母はナイジェリアの名前を持ってい ません。それは植民地主義の名残です。なぜならキリスト教の帝国 主義者たちはアフリカのイビビオ族の名前を野蛮だと見なしてい たから。私は子どもの頃の礼拝の仕方や、イエスがどのように描か れていたかを覚えています。イエスは白人で、茶色い髪をしてい ました。それが私たちに与えられたイメージでした。

過去に、1452年の教皇勅令について言及していますね。この勅令は ポルトガル王とカトリック教会にアフリカ人を永久に奴隷化する権 利を与え、大西洋奴隷貿易を引き起こすことになりました。その背景 には何があったと考えますか?

奴隷制を正当化するための神学や教義、文書を作り出すには、まず 自分たち以外の人々を人間ではない、あるいは自分たちより劣っ た存在として見る必要があります。土地を手に入れるために、人々 を捕えて奴隷にし、それを正当化するわけです。それは深刻な心の 病であり、道徳的な堕落です。人々をそのように非人間的に扱い、 家畜のように扱い、奴隷をほかの人に贈り物として渡したり、奴隷 が生み出した収益の一部が教会に献金されていたのは、非常にひ どいことです。動機は、もちろん欲望や金、土地ですが、最終的に はアフリカの人々を人間としてではなく、自分が望むものよりも 少ないものを与えられるべき存在だと考えたのです。そして、それ は重大な罪だと思います。

教会がアフリカ系の人々に正義をもたらすために何をするべきで しょうか?

教会は正当で真摯な罪の告白と悔い改めを行う必要があります。 悔い改めとは、自分が犯した罪について心を改め、二度とそれを犯 さないと誓うことです。でもそれだけでは十分ではありません。 告白と悔い改めがある一方で、修復も必要です。私たちの信仰には実際に修復の概念が組み込まれています。それは他者を元の状態 に回復させ、与えた害を取り除くことを意味します。これは象徴的 な修復の一形態にあたります。もちろん、物質的、金銭的な賠償も 必要ですが、それに加えて、植民地主義や奴隷制度を正当化した教 義に対する公的な非難も必要です。それについて教会がどう先導 できるでしょうか? 教会がリーダーシップを取ることで、アメリ カ、イギリス、スペイン、ポルトガルの政府や保険会社、大学(すで にいくつかの取り組みが始まっているところもあります)、そして この悪質で不正な事業に関わった他の機関が、それに続くように なるのでしょうか? もし教会に従って悪に向かって行ったのな ら、今度は教会に従って善に向かうこともできます。

「もし教会に従って 悪に向かって行ったのなら、 今度は教会に従って 善に向かうこともできます」

 

知識人として、また信者として、あなたに影響を与えた人は?

祖母です。私たち姉妹に最初に聖書を教えてくれた人で、祈りや聖 書を読むことの重要性を教えてくれました。それはいまでも変わ りません。祖母は信仰と実生活がしっかり一致していました。完璧 ではなかったけれど、本当に一致していて、その姿を私は大切に 思っています。なぜなら、そういう人はどこにでもいるわけではな かったからです。クリスチャンは信仰と実生活が一致するように 十分に努力してきたとは思いません。

「一致している」とはどういう意味ですか?

自分の信念に忠実に実践することです。祖母はいつもとても愛情 深く、誰に対しても親切でした。残念ながら、そのような人は少な いものです。イエスを信じていると言いながら、虐げられている 人や社会的に孤立している人を気にかけない人たちもいます。信 仰を自分の利益のために利用し、他人を支配しようとするのです。 私はイエスや聖典、そして預言者たちが支配者や抑圧者について 述べていること、さらにはイエスの母であるマリアが、支配をして いる帝国や支配者を主が最終的にその座から引き降ろすと予言し たことを手がかりにしています。

クリスチャンが、修復、賠償、正義、そして自分の価値観に一致する 生き方に向けてできることは何でしょうか?

信者は聖書を開くべきだと思います。とりわけ読み飛ばされがち な預言書を読むべきです。エレミヤ書、エゼキエル書、イザヤ書、 ナホム書、ハバクク書には、正義について多くのことが書かれてい ます。イエスも正義について多くを語っています。信者は神に問 いかけるべきだと思います。「私は何をすべきでしょうか? それ を行うために力を与えてください」と。そしてまだ信者でない人で さえも、近くて遠い同胞や隣人を助けるために自分には何ができ るのかを考えるべきだと思います。

ウワンはクリスティーナ・ エドモンドソン博士とともに、 おもに白人中心のキリスト教の空間に 疎外感を感じている黒人女性たちのために 作られたポッドキャスト 『Truth’s Table』を主催している。

ウワンはクリスティーナ・ エドモンドソン博士とともに、 おもに白人中心のキリスト教の空間に 疎外感を感じている黒人女性たちのために 作られたポッドキャスト 『Truth’s Table』を主催している。

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こちらの記事は Kinfolk Volume 48 に掲載されています

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